数年に一度やってくる衝撃

日々のアレコレ

すれ違った瞬間、ハッとして振り返ったら、振り返った相手と目が合った
ハッとしたはいいけど理由がわからない

なんだか曖昧に目を逸らしてしまってから、一瞬遅れて理由がわかった
その男の子から、金木犀の香りがしたからだった

こんな風に、数年に1度、金木犀の香りに立ちすくむことがある

最初は、25の時
当時私は、早稲田大学の裏手に住んで居た
マンションの入り口の道が一方通行なので、大学をぐるっと回って自宅へ帰る

仕事を終えてバイクで帰宅途中の深夜、0時も間際にその衝撃はやってきた
慌ててバイクを止め、ヘルメットを脱いで、その衝撃の主を探す
小さくて見過ごしそうになったけど、大学の生垣に、小さなオレンジの星のような花が沢山咲いていた

これか、こいつがこの香りの正体か!!
初めての金木犀とのご対面
札幌生まれの私は、本物の金木犀を知らなかった

ちいさなささやき声で歌うような香り
昔トイレにあったやつとは、似ても似つかない、艶やかで愛らしい香りに、誤解していて申し訳ない気持ちになり、本当の香りを知ることができて、うれしい気持ちになった

それから毎年、夏の終わりが近づくと、金木犀の香るのを心待ちにするようになった

しかし、ミンミンが歩道で腹を見せ始めても、日々の忙しさや無頓着さにかまけて、実際にその芳香が鼻腔を刺激するその瞬間まで、私はその心待ちにしている気持ちさえ忘れている

そして初秋のある日突然、私の鼻腔に殴り込みをかけてくる
あんな馨しい香りなのに現れ方がオラついてるのはなぜなのか

例えば、バラやジャスミンも豪華で華やかな香りだし、百合などは妖艶ささえ感じる濃厚な香りを放つ

その季節になると、華やかな香りを振りまくのは同じであるはずなのに、金木犀の、あの鼻腔をぶん殴られてハッとする感覚は、ほかの花には感じない(当社比)なぜなのか

私は年に1度、長野の戸隠神社へ伺うのだけど、奥社への参道脇に、必ず目に留まる杉の大樹がある

別にしめ縄を掲げてる訳でも、なにか特別な特徴があるわけでもない
でも、必ず目に留まる
呼ばれたように、そこで顔を上げるのだ

また、お会いしましたね
また、来年会いましょうね
そう伝えて、帰ってくる

人同士も、縁の深い人がいるように、同じように植物とも、そんなご縁が結ばれているような気がしている
あなたにも、そんなご縁の深い植物がいませんか?

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